コラム「ちょっとインテリア」
桐を家具用材として用いるのは日本だけと言われています。
桐箪笥が普及し始めたのは江戸時代初期から。和家具特集でもふれましたが、江戸大火の際いっせいに持ち出された車長持ちが道をふさぎ大惨事を招いたため、車長持ちの製造が禁止されます。変わって普及したのが箪笥。特に
軽くて持ち運びやすく、家事にあっても燃えにくい
桐の箪笥が発展しました。
また高温多湿の日本の気候には、
常に呼吸し中の湿度を一定に保ってくれる
桐は最も適しています。
今回は桐箪笥に注目してみました。
桐箪笥がよしとされるのは、桐が衣類を守るさまざまな特性をもっているからです。まずは桐のすばらしい性能をご紹介します。
桐は草?
桐の花
桐はゴマノハグサ科のキリ属に属します。「木」と「同じ」と書くように“木”ではなく“草”で、草の茎のように中が空洞になっています。
また、最初に伸びた根をそのまましておくより、 一度根元から切る方が元気のよい新芽が出てかえってよく成長する性質があるので、“一度切る”という意味で「キリ」と呼ぶ、という説もあります。
中国大陸原産で日本、中国、南米、アメリカに分布しています。日本では古くから木材用に植栽され、岩手県の南部桐、福島県の会津桐、岡山県から広島県東部にかけての備後桐
(※)
などが有名です。
(※)これらはすべて同一のニホンギリ種で、生育環境の違いからそれぞれの名前で呼ばれています
なぜ箪笥に向いている?
軽い
桐の比重は他の国産材に比べてもっとも小さく、桐箪笥は軽くて持ち運びに便利です。
美しい
木肌は色白でやわらかく、まっすぐで美しい木目。桐箪笥には気品と暖かみがあります。
虫がつきにくく、腐りにくい
桐材には昆虫を寄せ付けないパウロニン、セサミンなどが多く含まれています。また防腐力が大きいタンニンも多く含まれており、きわめて腐りにくい材です。
湿度を一定に保つ
乾燥した桐材は狂いが少ないため、隙間なく機密性の高い箪笥を造ることができます。また外気の湿度変化に応じて膨張・収縮し、引出し内の湿度を一定に保ってくれます。
燃えにくい
桐は発火点が高く熱伝導率がとても低いので燃えにくく、また熱を受けても割れにくい性質を持っています。桐箪笥に火がついて表面が黒く焦げてしまっても中まで熱を伝えにくく、衣類を守ってくれます。
吸水性がいい
これも火事の時に役立ちます。消火の水をすぐに吸収し、火をよせつけないと同時に膨張して隙間をふさぐので中身を守ってくれるのです。「火事になったら桐箪笥に水をかけろ」と言われています。
成長が早い
桐は生命力が強く成長も早いので、森林資源・環境問題の面からも効率のいい環境にやさしい資源だといえます。
再生できる
桐は他の堅木と違って、汚れても削れば元の木肌がよみがえります。桐箪笥は2,3回は再生でき、親子3代にわたって伝えられるのです。
・・・また草である桐は多孔質で
音響性がいい
ので、桐の楽器なども作られています。
桐が箪笥になるまで
▽
製材・乾燥・アク抜きに約3年
かけます。これにより狂いのない丈夫な材が出来上がります
▽
熟練の職人が木目や色に気を配りながら
同質の材を選別
します
▽
木釘を打ち込む伝統的な技法
で本体の枠組みが頑丈に組み立てられます
▽
引出しや扉は
カンナで調整しながら隙間なく
組み立てられます
▽
表面を
うづくりで丹念に磨き
、木目を際立たせます
▽
夜叉の実
を煎じて作る天然の染料と
との粉
を混ぜたものを刷毛塗りします
▽
乾燥させ、
蝋
を均一に塗ります
▽
金具
を取り付けて仕上げです
伝統的工芸品
桐箪笥は熟練の職人が一棹一棹手作りする伝統工芸です。
桐を扱う業者は「桐専門」の業者が多く、桐の原木から箪笥の生産、流通まで他の木材とは異なるそうです。柔らかくて粘りのある桐材には切れ味の良い道具が必要ですし、塗装方法も桐独自のものです。
伝統的な「技」を振興する「伝統的工芸品」には、新潟の「加茂桐箪笥」、埼玉の「春日部桐箪笥」、「名古屋桐箪笥」、「大阪泉州桐箪笥」が指定されています。
春日部桐箪笥
江戸時代初期、日光東照宮を造るために集められた職人が宿場町春日部に住み着き、周辺で採れる桐を使って指物を作ったのが始まり。
加茂桐箪笥
19世紀始めに大工が製造したのが始まり。原木の製造からすべて一貫して行い、全国の桐箪笥の約70%を生産している。
名古屋桐箪笥
名古屋城の築城に携わった職人たちが城下町に住みついたのが始まり。飛騨桐という良材に恵まれ発展した。
大阪泉州桐箪笥
農家の副業として桐の植付けが許され、農業の傍らに簡単な指物の製造が始まった。木釘を使わず、「ほぞ」と「ほぞ」をはめ合わせて組み立てるのが特徴。
* 伝統的工芸品 *
経済産業大臣が指定する「伝統的工芸品」。「工芸品の特長となっている原材料や技術・技法の主要な部分が今日まで継承されていて、さらに、その持ち味を維持しながらも、産業環境に適するように改良を加えたり、時代の需要に即した製品作りがされている工芸品」という意味で、さまざまな分野から約200品目が指定されています。「伝統的工芸品産業の振興に関する法律(伝産法)」によって、
□日常的に使用するもの
□製造過程の主要部分が手作りであるもの
□およそ100年以上継承されている技術と技法
□伝統的に使用されている原材料
□一定の地域で産地を形成しているもの
と規定されています。
桐箪笥では、埼玉県の春日部桐箪笥・新潟県の加茂桐箪笥・愛知県の名古屋桐箪笥・大阪府の大阪泉州桐箪笥和家具が伝統的工芸品に指定されています。
くわしくは
「全国伝統的工芸品センター」
へ
設置
桐箪笥は直射日光を嫌います。また暖房が直接あたる場所も避けてください。
風通しが良く、湿気の少ない、平らなところ
に設置するようにして下さい。
お手入れ
・普段のお手入れは、
柔らかく乾いた布で乾拭き
してください。ほこりが付くと「かび」や「しみ」の原因になる場合があります。
・濡れ雑巾や化学雑巾は絶対に使用しないで下さい。
・もし水や油をつけた場合は、拭かずに柔らかい紙をあてて水気を吸い取り、との粉を振って乾かします。
洗い直し
桐は柔らかく、キズや汚れがつきやすいのが難点ですが、無垢板を使ってキチンと造られた桐箪笥は
洗い直しをすることで新品同様によみがえる
のが最大の特徴です。
表面の汚れを洗い、削りなおしをすると元の木肌が現れます。塗装を施し、新しい金具をつければ新品同様。
(注:キズや汚れの程度にもよります)
・・・おばあちゃんからお母さん、そして娘へと・・・
きちんと職人さんの手で手造りされた桐箪笥は、再生を繰り返し、代々受け継いで、3代は使えるといわれています。
地球にやさしく、機能的で美しく、日本固有で古来からの伝統を守りつづける・・・それが「桐」です。
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(2003年8月作成)
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